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90秒遅れは定刻通り

明治村

JR脱線事故での「90秒の遅れ」に海外の鉄道関係者が関心を寄せている。欧米では、この程度の遅れは「時間通り」と見られている。感覚の違いには国民性や文化の差もありそうだ。
 事故を起こした快速電車は、オーバーランで伊丹駅出発が約1分30秒遅れ、制限速度時速70キロのカーブに100キロ以上で入ったことが判明している。
 米紙ニューヨーク・タイムズは「原因には時間への強迫観念?」との記事を1面に載せ、「世界中どこでも、90秒遅れはおそらく定刻通りとみなされるだろう」と指摘した。
 ニューヨーク市交通局が列車の遅れと認めるのは「最終駅到着が5分遅れた」ときだ。原因不明の遅れがあれば運転士から事情を聴く。「スケジュールを本来のものに戻すためで、処罰が目的ではない。でも、速度制限違反は罰する」と広報担当のディアドレ・パーカーさん。
 「列車の遅れとは3分以上のこと。90秒程度では客から苦情を受けたこともない」
 ベルリンで通勤電車を運行する独エスバーン・ベルリン社の広報担当バルデン・マーティンさんはそう話す。ドイツではどれだけ遅れたのかではなく、遅れの原因を問題にするという。「我々も定時運行を大切にしているが、秒単位は現実的に考えにくい」
 英国の大手鉄道会社バージン・トレインズは「短距離の列車では、ラッシュアワーで4分を超えたら『遅れ』とみなす」という。
 鉄道大国フランスも、90秒を遅れとは考えない。仏国鉄によると、88年の列車衝突事故後に自動制御システムを導入。遅れを取り戻すために上げることのできる速度の許容範囲もシステムが制御している。広報担当者は「許容範囲を超さないと取り戻せない遅れは、放っておくしかない」と話した。
 イタリアで列車の遅れは日常的だ。オーバーランも多く、ホームの外れに止まった列車に乗客が走り寄る光景も珍しくない。鉄道会社トレンイタリアは「5分から15分程度の遅れは乗客も認めていると思う」と言う。
 イタリア最大の労組イタリア労働総同盟のフランコ・ナッソ交通労組書記長は「『遅刻はなるべくしないようにする』くらいの認識でいいのでは」と話す。
 海外との受け止め方の違いについて、鉄道評論家の川島令三さんは「遅れに文句を言う客が日本では多い。海外はあきらめているところが多いが、日本ではきちんと来るのが当たり前という感覚だ」と語る。
 日本では戦前から鉄道の正確性が国民の常識となっており、JR西日本に限らずどの鉄道会社も精密にダイヤを作る。川島さんによると、通勤線区では30秒程度の遅れなら調整できるが、90秒の遅れは「日本では大きい」。
 交通評論家の角本良平さんは、鉄道に限らず正確さを求める日本の国民性の背景には、人口密度の高さがあるとみる。「運行の精密さが安全の前提であり、時間の正確さの上に安全が成り立っている」という。
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